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介護保険下での
グループホーム設立の
要点と効果をあげる要素
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日総研出版
「痴呆介護」 Vol.1 No.3
(H12.9.10.発行)掲載
特集2
「痴呆性高齢者がここちよく感じる環境」より |
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医療法人久幸会 痴呆デイケア婦長 高崎 京子 |
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現在、全国的に痴呆高齢者向けグループホーム(痴呆対応型共同生活介護/以下GHと略す)の設置が活発になってきている。GHは施設の大所帯と違い少数で生活していくため、痴呆高齢者のケアに有効といわれている。また厚生省のゴールドプラン21の中で、全国に2004年度までにGHを3,200施設設置する目標が明記され、今後GHの設立は加速すると思われる。しかしながら、指定基準の問題や経営的な問題から参入設立できない民間法人や業者も多く、介護老人福祉施設や介護老人保健施設などの施設から比べるとまだまだ少ない状況である(現在の推計では全国でおよそ300施設程度)。
当法人では、平成5年よりGHの運営に着手し、現在、秋田市内で2ヶ所(1ヶ所は介護保険指定事業申請中)と埼玉県与野市に1ヶ所のGHの運営を行なっている。また介護保険外の宅老施設の運営や民間GHへの協力も行なっている。
私どもの、GHでの6年間の実践から、介護保険下でのGH設立の要点とGHケアの効果をあげる要素について述べる。 |
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1.痴呆性グループホーム(痴呆対応型共同生活介護〕とは
5〜9人程度の介護が必要な痴呆性のお年寄りが、家庭的な雰囲気の中で、24時間スタッフと共に共同生活を行うことで、残存能力を引きだし、痴呆症の緩和を促すことを目的とした介護サービスである。グループホームの形態は多様であるが、一戸建ての「単独型」と、病院や老人福祉施設に併設される「併設型」が殆どである。
介護保険では、GHの建物自体はお年寄りが暮らす住居とみなされ、施設ではなく、在宅サービスに位置づけられている。現状では併設型の場合にのみ、建設費の国庫補助の対象となる。 |
2.当法人のグループホーム開設動機と現在のG.H運営状況
昭和58年より精神障害者や知的障害者のグループホームの運営を経験し、さらに地域の要望で託老所を設置する。その後、痴呆疾患専門病棟や老人保健施設、痴呆デイケアの運営の中で、小規模処遇と生活リハビリが求められていることを実感し、平成5年にGH「もみの木の家」をスタート。現在のGH運営状況は下記の通りである。 |
| 【表1】当法人GH運営状況 |
| (平成12年7月1日現在) |
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開設年月 |
所在地 |
形態 |
家屋の構造
(木造) |
入居者 |
介護保険指定
事業者届 |
| 定員 |
性別 |
| もみの木の家 |
1993年11月 |
秋田県
秋田市 |
病院・老健
併設型 |
民間家屋
一戸建ての
1階部分 |
6 |
男0
女6 |
2000年4月1日 |
| りんどうの家 |
1999年10月 |
秋田県
秋田市 |
単独型
(住宅地) |
民間家屋
一戸建て |
6 |
男2
女4 |
指定申請中※ |
| 卯月 |
1999年5月 |
埼玉県
与野市 |
単独型
(住宅地) |
民間家屋
一戸建て |
6 |
男0
女6 |
2000年6月1日 |
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| 【表2】当法人のGH運営例「もみの木の家」 |
| 施設所在地 |
秋田県秋田市 |
| 運営主体(法人種別) |
医療法人 |
| グループホーム開設年 |
1993年11月 |
| 母体施設/その他施設 |
| 病院、老人保健施設 |
| / |
痴呆専門治療病棟、 |
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在宅介護支援センター、 |
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ホームヘルパーステーション、 |
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訪問看護ステーション、 |
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精神科デイケアセンター、 |
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精神障害者社会復帰施設など |
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| 定員 |
6名(女性のみ) |
| 建築概要 |
民間家屋型木造2階建ての1階部分 |
| 利用者(12.6.29現在)
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年齢 |
性別 |
病名(厚生省基準) |
要介護 |
GH入所前 |
| A |
79 |
女 |
アルツハイマー型痴呆 |
IV |
4 |
痴呆専門治療病棟 |
| B |
80 |
女 |
アルツハイマー型痴呆 |
III a |
4 |
在宅、デイケア利用 |
| C |
62 |
女 |
脳血管性痴呆 |
III a |
3 |
痴呆専門治療病棟 |
| D |
82 |
女 |
混合型痴呆 |
III a |
1 |
痴呆専門治療病棟 |
| E |
79 |
女 |
老年期痴呆 |
III a |
4 |
老人保健施設 |
| F |
90 |
女 |
老年期痴呆 |
IV |
4 |
痴呆専門治療病棟 |
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| スタッフ数 |
| 介護福祉士4名(内管理者1名)、介護職2名、(計6名) |
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| スタッフの配置状況 |
| (日勤帯/8:30〜17:00)2名 |
| (夜勤帯/16:00〜9:00)1名 |
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| 常勤以外のスタッフ |
| 嘱託医、看護婦、ケースワーカー、作業療法士、 |
| 地域ボランティアなどの導入を図る |
| ソーシャルコーディネーター、 |
| 地域ボランティアグループ |
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利用料
30日換算 |
| 介護保険自己負担分約25,000円 |
| (24,270〜26,220円)要介護度により変化、 |
| 家賃40,000円、食費45,000円、 |
| 光熱費5,000円、施設維持費5,000円 |
| (計)120,000円程度 |
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| 公的補助 |
| 現在なし |
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| ※介護保険前− |
厚生省モデル事業補助費、 |
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各種研究事業費、 |
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市委託事業補助費 |
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| 介護保険でGHを設立するためには、下記表3のような基準を満たす必要がある。各項目ごとに若干の説明を加える。 |
| 【表3】介護保険下での主な事業者指定基準について・痴呆対応型共同生活介護事業GH |
| 項目 |
内容 |
| 1. 運営主体 |
法人格取得必要(医療法人、社会福祉法人、NPO、株式会社、など) |
| 2. 施設構造 |
居室面積7.43平方メートル(4.5畳)以上/入居者分の個室必要 |
| 3. 職員 |
・管理者は、痴呆介護に関する専門的な知識及び経験を有するもの
・介護計画を作成できる職員を配置する
・昼勤帯は入居者3名に対し職員1名・夜勤帯は1名の職員配置が必要 |
| 4. バックアップ |
協力病院、施設が確保できること |
| 5. 住民の理解 |
住宅地への設置(地域住民との交流確保のため) |
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1.運営主体
開設には、法人格所得が条件になる。GHはその規模の小ささから良い効果が期待できるのだが、一歩間違えば閉鎖的、周辺から見えにくい環境にもなりえる。行政も悪質業者参入を防ぐため、許認可審査は厳しくなっていると思われる。
当法人の場合は、積み重ねた実績と信頼があるため許認可もスムーズであったが、地域住民の理解、協力を得、行政を動かすにはそれなりの覚悟が必要である。 |
2.施設構造
居室の広さなどは、家屋を改造して行なう場合に特に注意が必要と思われる。居室が明確に区分(個室)されていることが必要であり、今ある建物を使用してと考えた場合、必然的に利用者数が決まってくる。また家屋の改造も安くはない。 |
3.職 員
痴呆高齢者のGHケアは、理想だけで出来るほど、簡単ではないと思う。GHの場合、介護の技術はもちろん、食事・洗濯など忙しいときテキパキとやる家事の能力、ある程度の医学的知識、さらには夜勤帯を一人でみるため緊急時対応能力など、生活全般に指導、援助していく能力が必要となる。GHケアは、やはり職員しだいであり、職員の研修教育は欠かせない。ただしGHをベースとした研修会は、またまだ少ないのが現状である。
「もみの木の家」の職員配置は、昼勤帯職員2名・夜勤帯は1名であるが、実質現場でのマンパワーは十分充足出来る人数と思われる。しかし採算面では、夜勤帯まで入れると、最低6名の職員の回転で勤務を組む必要があり、全体としては入居者1名に対し、職員1名のマンツーマンとなり、人件費の捻出が大変である。 |
4.バックアップ
私どもの経験では、GHで終末期医療を提供することは難しいため(医療職の配置基準なし)、母体となる病院、施設のあることがG.Hを利用することへの安心につながりやすい。また日常的にも外来診察、薬物の管理、カンファレンス時の助言など病院看護婦、他専門職で対応している。
バックアップ施設、人材をもっていることは、様々な変化をみせる高齢障害者にとって必要不可欠であると考える。バックアップがなければ、夜勤一人で勤務する職員は心配が絶えないであろう。 |
5.住民の理解
設置場所は基本的に住宅地となっている。先にも述べた通り、閉鎖的にならないよう地域住民が自由に出入りできる環境を設定することで、オンブズマンの効果が期待できる。
当法人の場合、地域ボランティアの窓口となる地域交流課という部署がある。GHの運営上もたくさんのボランティアの皆さんに協力いただいているが、連絡調整などは地域交流課にお願いしている。ボランティアを受け入れるには、それなりの調整が必要となるため現実にGHスタッフで行なうには限界がある。 |
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GH「もみの木の家」入所者の事例から考察する。
※入居者の詳細は、3.当法人のGH運営例・「もみの木の家」参照 |
事例1 Aさん (キーワード:社会的役割、馴染みの環境、わき役と指導)
もみの木の家開設当時から入居されている方で、痴呆症状が進み、記銘力、理解力は著しく低下している。複雑な会話は出来ず、スタッフの指示も理解できないことが多いが、生活リハビリを通し、昔からの習慣である、台所仕事や掃除など自ら熱心に行なっている。時には、味付けなどをスタッフに指導できるようなレベルを維持している。 |
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GHでの食事の支度などは、入居者と一緒に行なうという環境設定により、社会的な役割意識を生むことにつながる。また生活の場に台所があるため、思い立ったら自由にできるという環境は、入居者の生活意欲の向上につながる。結果、入居者の多くの残存能力を引き出すことができると考える。
スタッフは何度も根気よく声を掛けすることにより、馴染みのある動作を思い出す(手続き記憶の想起)ことが自信と生きがいを生むことになる。介護スタッフは、わき役(援助者)と指導者としての立場を使い分け、一人ひとりの得意分野を活かし、役割作りを考える必要がある。 |
事例2 Bさん (キーワード:心理的サポート、心のゆとり)
入居当時は、上品で身なりもきちんと、おしゃれな方であったが、徐々に痴呆症状が進行し、最近では上着を後ろ前に着たり、髪形や身なりを気にしないようになってきた。ボランティアによる美顔マッサージと化粧療法を取り入れたところ、自ら鏡を見たり、髪形を気にするなどの行動や言動がみられるようになった。 |
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GHではスタッフの配慮によって、その日の行動にあわせて身なりを整えることが容易である。身なりを整えることや、外出時の適度な緊張は、生きる誇りと喜びをよみがえらせると考える。老いても痴呆と診断されても、きれいでありたいという女性の気持ちを大切にしていきたい。
その他心理的効果を期待して、動物療法的活動や園芸療法的活動を行なっている。猫の世話をしたり、花や野菜を育てることで、表情が穏やかになっていると感じる。スタッフと一緒に会話しながら、身なりを整えたり、花に水をあげたり、動物と接したりすることが、生活の中での「ゆとり」となり、他者との信頼関係にもつながっていると考える。 |
事例3 Cさん (キーワード:過刺激への配慮、人間関係を取り持つ)
易怒的で、協調性に乏しく、また不潔行為があり、他入居者とのトラブルが絶えなかった。毎回、声掛けすることにより、また他入居者にも刺激され、文句を言いながらも食事の支度を手伝うようになった。上手に作業できた時は、得意げな笑顔を見せるようになった。しかし不潔行為があるため、他入居者より注意を受けたりするため、スタッフが手洗いなどの援助をし、うまくとりはからうように配慮した。結果、不潔行為自体は改善されなかったが、他入所者とのトラブルを事前に防ぐことができ、できる作業を通して、入所者と一緒に食事支度など行なうようになった。 |
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| 少人数のメリットは大きいが、小人数であるがゆえ、他入居者の問題行動が目に付き、トラブルに発展しやすい。テープルの席一つにしても、嫌いな人と向き合う形では嫌だという入居者もいる。GHの小集団は入居者お互い刺激しあうことで良い結果を生み出すが、過刺激への配慮も必要である。スタッフは一人ひとりをよく理解し、人間関係を取り持つ配慮をすることが大切である。 |
事例4 Dさん (キーワード:個別ケア、日々の観察)
帰宅要求が強く、暴言暴力が頻繁にみられた。ゆっくり話を聞いたり、周辺に散歩に出かけたり、台所仕事をお願いしたりすることで症状が一時的に落ち着くが、しばらくするとそれも少なくなった。そこで散歩だけではなく、近くのお店に買い物、外食、温泉など、目的をもっての外出を積極的に行なった。結果、入居者との生活に安心感ができ、表情も穏やかになった。また最近は広告を使った折り紙に夢中になり、余暇生活の幅も広がり、楽しんでいる様子がうかがえる。 |
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帰宅要求などは、私たちは問題行動と捉えやすいが、GHで生活をすることを拒否しているごく当たり前のサインである。何らかの問題があるとき、その理由は何なのか、入居者のニーズは何なのか、踏み込んで対応する必要も出てくる。小集団生活の中での個別対応は、他入居者とのかねあいにも配慮しながら、指導援助しなければならない。それも入居者は、日々変化していくため、常に生活の場を観察しながら援助が必要である。GHでは入居者一人一人の症状、問題行動に対する個別ケアがしやすいというメリットがあるが、一方で小規模だからこそ、スタッフの質が問われる。
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GH設立の要点とGHケアの効果をあげる要素を事例で述べたが、今後質の良いGHが増えていくためには、財政的な問題が大きいと思われる。人材面も含め、併設型で関連施設からの絶大なバックアップによって支えられているのが、私共法人の現状である。
介護報酬の比較をした場合、要介護3の方の場合で、GHは介護老人保健施設より月約4万円低い。施設側からみれば、人件費が掛かるのだから介護報酬をあげて欲しいとなる。利用者にしてみれば、老健の倍近く自己負担のかかるGHには抵抗がある。GHは介護保険のサービスメニューにはあるが、選べるだけの数がなく、また入居者には経済的な壁があるのが現状である。
最近、新しくきれいで、立派な施設ができているが、GHは必要以上に立派である必要はないと思う。それよりも身近な地域で、困ったときに、経済力がなくても入れるGHが求められていると思う。
私たちが呆けても安心して暮らせるよう、他GHの仲間と手を組み、モデルとなるような施設を目指し頑張っていきたい。 |
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日総研出版 「痴呆介護」 Vol.1 No.3 (H12.9.10.発行)掲載
特集2「痴呆性高齢者がここちよく感じる環境」より |